/* Sitemap plugin By MyBloggerLab */ #bp_toc { color: #666; margin: 0 auto; padding: 0; border: 1px solid #d2d2d2; float: left; width: 100%; } span.toc-note { display: none; } #bp_toc tr:nth-child(2n) { background: #f5f5f5; } td.toc-entry-col1 a { font-weight: bold; font-size: 14px; } .toc-header-col1, .toc-header-col2, .toc-header-col3 { background:#9E9E9E; } .toc-header-col1 { padding: 10px; width: 250px; } .toc-header-col2 { padding: 10px; width: 75px; } .toc-header-col3 { padding: 10px; width: 125px; } .toc-header-col1 a:link, .toc-header-col1 a:visited, .toc-header-col2 a:link, .toc-header-col2 a:visited, .toc-header-col3 a:link, .toc-header-col3 a:visited { font-size: 13px; text-decoration: none; color: #fff; font-weight: 700; letter-spacing: 0.5px; } .toc-header-col1 a:hover, .toc-header-col2 a:hover, .toc-header-col3 a:hover { text-decoration: none; } .toc-entry-col1, .toc-entry-col2, .toc-entry-col3 { padding: 5px; padding-left: 5px; font-size: 12px; } .toc-entry-col1 a, .toc-entry-col2 a, .toc-entry-col3 a { color: #666; font-size: 13px; text-decoration: none } .toc-entry-col1 a:hover, .toc-entry-col2 a:hover, .toc-entry-col3 a:hover { text-decoration:underline; } #bp_toc table { width: 100%; margin: 0 auto; counter-reset: rowNumber; } .toc-entry-col1 { counter-increment: rowNumber; } #bp_toc table tr td.toc-entry-col1:first-child::before { content: counter(rowNumber); min-width: 1em; min-height: 3em; float: left; border-right: 1px solid #fff; text-align: center; padding: 0px 11px 1px 6px; margin-right: 15px; } td.toc-entry-col2 { text-align: center; }

2026/02/28

ジャズ・バラードの森(8)Ruby, My Dear

2月17日はセロニアス・モンクThelonious Monkの命日だ(1982年没64歳)。モンクは亡くなるまでの最後の10年近く、ハドソン河をはさんだマンハッタン対岸ウィーホーケンの崖上に建つニカ夫人邸で暮らしていた。演奏活動は1976年を最後に終えている。モンクは生涯に70曲以上作曲している屈指のジャズ作曲家だが、モンクらしい難解で個性的な曲だけでなく、ジャズ・スタンダードになった美しいバラードも何曲か作っている。

いちばん有名なのは、もちろん "Round Midnight"だが、"Reflections", "Ask Me Now"などの優しくきれいな曲もあり、さらにこの "ルビー・マイ・ディア "も、モンクを代表する傑作バラードだ。私の訳書『セロニアス・モンク/独創のジャズ物語』(Robin Kelley著)では、タイトルの「ルビー」とは、モンクの姉の友人で、初恋の相手だった「ルビー・リチャードソン」のことだと言われているが(ルビー本人の写真も収載、長身の美人だ)、同時に、モンクが実際にそのルビーのことを想って書いたかどうかは分からない、とも書かれている。最初は"Manhattan Mood"という曲名だったが、後になってタイトルを変えたという話もある。まあ、モンクのことなので、みんな「謎」のままの方が楽しい。

モンクはこの曲を1945年頃に作曲し、自身の初録音は1947年(30歳)のBlue Note『Genius of Modern Music Vol. 1』で(Gene Ramey -b,  Art Blakey-dsとのトリオ)、その10年後1957年にRiversideの『Monk's Music』で、コールマン・ホーキンズ(ts)他との共演、さらに同年Jazzland盤の『wth John Coltrane』でコルトレーンと共演している(リリースは1961年)。さらに『Alone in San Francisco』(1959 Riverside)、『Solo Monk』(1965 Colombia)でソロ録音している。その後1967年の『パロ・アルト』ライヴ、1969年のパリでのカルテットのライヴ録音、そして1971年のロンドン(Black Lion)でのソロ録音が最後だ。好みだが、この中でこの曲の代表作を選ぶなら、やはり1957年録音のコルトレーンとの共演盤だろうか。ドラッグが理由で、マイルスバンドをクビになったコルトレーンをモンクが雇い、「ファイブスポット」出演による特訓中に録音された演奏で、コルトレーンにPrestigeとの契約があったためRiversideから出せずに、サブ・レーベルだったJazzlandから4年後にリリースされたもの。コルトレーンはその期間に、モンクからバラード演奏の何たるかも学んだといい、覚醒しつつあった飛躍前のコルトレーンとモンクの貴重な共演だ。

モンク以外のピアノだと、まずはバド・パウエルのヨーロッパ録音『Portrait of Thelonious』(録音1961/リリース1965)だろう。私がこの曲を知ったのも、実はこのアルバムを聴いてからだ。疑似ライヴ録音だが、音質も良く、当時としてはパウエルの調子も悪くないので、昔からの愛聴盤だ。モンクとパウエルは兄弟のような付き合いをしていて、パウエルはモンクから多くを学んでいたが、師匠の曲を弾かせたらモンク以上だったと言われている。ただし、パウエルのモンク作品録音記録はほとんどない。このアルバムは、パウエルがそのモンク作品だけを演奏した貴重な記録なのだ。メンバーはPierre Michelot (b)、Kenny Clarke (ds)というパリ在住のミュージシャンによるトリオ、モダンなアルバムジャケットは、二人を支えていたあのニカ夫人が描いた抽象画である。

パウエル以外の私有のアノ・トリオでは、ケニー・ドリュー、ランディ・ウェストン、ジョン・ヒックス、マッコイ・タイナーの各バージョンがあって、それぞれ個性的で楽しめるが、60年代にヨーロッパに移住する前、ニューヨーク時代のドリューが残したクラシックなピアノ・トリオの秀作『Kenny Drew Trio』(1956 Riverside)が、アルバム全体の出来も含めて個人的にはいちばん好みだ(Paul Chambers-b, Philie Joe Jones-ds)。ロリンズ伝記『Saxophone Colossus』には、若きロリンズとパウエルの他、ハーレム時代のケニー・ドリューたちとのワイルドなエピソードが出て来て興味深い。ドリューはパウエルと同じくクラシック・ピアノの素養があり、NYCの音楽芸術高校を卒業した神童だった。

ポール・モチアンPaul Motian (ds)が、ジョー・ロヴァーノ Joe Lovano (ts)、ビル・フリゼール Bill Friesell (g)とベースレス・トリオで全10曲モンク作品だけに挑戦した『Monk in Motian』(1988)が好きだ。モンク本人が聴いたら一番喜びそうなモンク・トリビュート・アルバムのような気がする。モチアンの叩くドラムス上に漂うような、浮遊感のあるロヴァーノ、フリゼールのプレイが新鮮で、特にフリゼールのアブストラクトなプレイが素晴らしい。そこにジェリ・アレンGeri Allen(p)とデューイ・レッドマンDewy Redman(ts)が各2曲ずつ客演し、"Ruby, My Dear" にはジェリ・アレンが参加してカルテットとなり、モンキッシュなピアノでモンク・ワールドをさらに陰翳濃く表現している。このアルバムは、他のモンク曲も(モンク好きなら)すべて楽しめる。

モンク自身、ビッグ・バンドで自作曲に3度挑戦しているが、モンクの曲は大編成バンドでやると非常に魅力的な音楽になる「可能性」があるのだ。ただし当然だが複雑で難しすぎるので、挑戦するミュージシャンが少ないのが残念だ。スタン・ケントン楽団にいた西海岸の作編曲家ビル・ホルマンBill Holmanの『Brilliant Corners: The Music Of Thelonious Monk』(1997)は、20世紀で唯一ビッグバンドでその世界に挑戦したアルバムで、演奏も非常にクオリティが高く、ゴージャスで楽しめる。2010年代には、ジョン・ビーズリーJohn Beasleyがビッグバンド『Monk'estra』を結成して何枚か同名アルバムをリリースしている。もう1枚は、気鋭の狭間美帆が率いるオランダのメトロポール・オーケストラ・ビッグバンドのライヴ盤『The Monk: Live at Bimhouse』だ。こちらはモンク生誕100年という2017年に録音されたトリビュート・アルバム。"Ruby, My Dear" はビル・ホルマンと狭間の両アルバムで取り上げられている。曲自体はモンクにしては素直で美しいメロディを持つ曲なので、アレンジも演奏難度も、そう高くないかもしれないが、さすがに狭間のオーケストラ・アレンジとサウンドは全体にモダンで聴きやすい。

この曲はもちろん、モンクがインストルメンタルとして作曲したものだが、後年Sally Swisherが歌詞をつけたヴォーカル・ヴァージョンも録音され、"Dear Ruby" というタイトルで何枚かリリースされている。私が持っているのは、『 Carmen Sings Monk』 (1990)のカーメン・マクレーCarmen McRae、T.S.Monkの『 Monk on Monk』 (1997) でのケヴィン・マホガニーKevin Mahogany、さらにJohn Beasleyの『Monk'estra Vol.2』(2017) でのダイアン・リーヴスDianne Reevesの3つのヴァージョンだ。唄うのは結構難しい曲だと思うし、どれがいいかは好みによるだろうが、やはりこの3枚でいちばんジャズ&モンクを感じるのは、大御所カーメン・マクレーのヴァージョンだろう。このレコードは全部がモンクの作曲した作品であり、クリフォード・ジョーダン(ts)、ジョージ・ムラーツ(b)、アル・フォスター(ds)他の参加で、全曲でカーメンの円熟の歌唱も楽しめる。またこのCDは録音も非常に良いので気持ちがいい。カーメンはこのアルバムで1990年グラミー賞「Best Jazz Vocal Performance - Female」にノミネートされている。