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2019/10/01

シブコのおかげでマリオにハマる

AIG全英女子オープン
写真:テレビ東京
“シブコ” こと渋野日向子は、久々に登場した日本女子プロゴルフ界のスターだ。AIG全英女子オープンでの、12番P4池側のワンオン・イーグル狙いの1Wティーショット、優勝を決めた最終ホールでの長いバーディパットには “しびれた”。正直言って、プロゴルフは男子も女子も最近はテレビでもほとんど見たことはなかった。男子は石川遼以来、スター性のある選手が見当たらず、女子は毎回上位が韓国勢ばかりになって、しかもミニスカなどファッションばかり注目されて、スポーツとしての面白さが感じられなくなっていた。しかしシブコは女を売りものにせず、男子並みの思い切りの良い、リスクを恐れない力強いショットを連発し、それが見ていてスカッとして実に爽快なのだ。しかもあの明るく屈託のない笑顔を終始振りまいてプレーしていて、ラウンド中の所作も愛嬌があるし、ホールアウト後の喋りも、そつがなく、ツボをはずさず、かつ面白い。何より、プレー中にギャラリー全員を自分の味方に引きつけるという、アスリートとして天性の魅力を持っている。ホール間を移動するときの親しみやすさもそうだし、カップインしたときの観衆の大盛り上がりをみれば、どれだけギャラリーが一体となって、彼女の一挙手一投足とそのプレーに見入っているかよくわかる。ギャラリー数も、トーナメントごとに記録を塗り替えているという盛況ぶりで、彼女もそれを楽しんでいる。こういうゴルフの風景を見たのは久し振りだし、単に強くてうまいだけではなく、これほどギャラリーを引き付け、楽しませる魅力のある女子ゴルフ選手はこれまでの日本にはいなかった。日本中のゴルフファンや、最近ゴルフに興味を失っていた人たちまでが拍手喝采して、“シブコ・フィーバー” が起こるのも当然だろう。女子テニスの大坂なおみも、サッカーの久保健英もそうだが、プロスポーツはジャンルに関わらず、彼らのように若くて力もあり、かつ魅力のあるスーパースターが登場しないと面白みがなく、盛り上がらないものだ。彼ら全員が、“スーパースター” ならではの「何か」を持っているのが感じられるし、しかもそのポテンシャルがいずれも世界レベルであるところがすごい。シブコも狭い日本に留まらず、できるだけ早く海外ツアーに参戦して、持てる才能をさらに開花させるべきだ。彼女は人格、性格的にも、世界の舞台に挑戦して、そこへ溶け込み、そこで勝負することに向いていると思う。
任天堂
マリオオープンゴルフ
昔はサラリーマンにゴルフは必須の趣味(技能?)で、社内交流も社外接待もゴルフなしでは済まない世界だった。また、やってみると非常に奥の深い、面白いスポーツであることも確かだ。しかし過去と違い、サラリーマンの交流の方法も、接待の世界も変質し、もはやゴルフにそうした役割はなくなったし、プレー人口そのものも大幅に減っているようだ。実を言えば自分でやるゴルフも、20年以上前にひどいぎっくり腰になって医者から止められて以来、引退してその後はお誘いがあってもプレーしてこなかった。ところがシブコのプレーをテレビで見ているうちに、久々に急にゴルフをやってみたくなった(結構ミーハーなのだ)。とはいえ、ゴルフ道具もとっくの昔に処分して手元になく、当然ながら、なまった身体も今さらついていかないだろう……で、思い出したのが、任天堂のファミコンのゲームで昔やった「マリオゴルフ」だ。3年ほど前に、「クラシックミニファミコン」という小型化した現代版ファミコンを懐かしさのあまり買ったのだが、HDMIケーブルが短い、コントローラーが小さすぎて使いにくいなどの問題があって、何度かやってすぐにやめてしまった。しかし中のソフトに「マリオオープンゴルフ」が入っていたのを思い出し、テレビから離れても操作できる長いHDMIケーブルを購入して、久しぶりにやってみることにした。

パーフェクトゴルフ
写真:メルカリ
私は決してゲーム好きというほど遊んでいるわけではないが、元々RPG系よりテニスやゴルフやカートなどのアクション系ゲーム好きで、特にゴルフ・ゲームに関しては、ファミコンが登場する以前から(1970年代後半)家で遊んでいた筋金入りのゲーマー(?)だった。発泡スチロールでできたごく小さなゴルフボールを、回転するフィギュア(人形)に取り付けたこれまた小さなクラブで打って、コースを回るというゲームにハマって毎晩プレーしていた。距離やライに応じてクラブの種類(ウッド、アイアン)も取り換えられ、フェイスの角度も変えられるので、フックも、スライスも、バックスピンも自由に打てるという、信じられないほど超すぐれもののアナログゲームだった(ネットで調べてみたら「パーフェクトゴルフ」という商品名だった)。クラブのフェイスの角度を変えることでボールに回転を与えて、飛距離と飛び方をコントロールするという技術は、ミニサイズというだけで物理的には本物のゴルフとまったく同じ原理である。当時はゴルフを始めたばかりで、面白くて、勉強していたこともあり、実際のゴルフのラウンド時のイメージトレーニングができるというところが実に素晴らしくて、ハマッていたのだ(ただし、実際のラウンドでスコア上これが実証できたことは余りなかった気がするが…)。確か十年くらい前に登場した、この改良版と思われる似たようなゲームを入手して遊んだこともあるが(ボールがゴムに代っていた)、面白さと斬新さという点では初代に到底及ばなかった。1980年代に登場したファミコンの「マリオゴルフ」はいわばこの電子版であり、その後のゴルフゲームの原点というべきもので、面白くて当時は夢中になって遊んだ記憶がある。もちろん、ゴルフをやったことがない人でもゲームとしては楽しめるだろうが、ゴルフというのは、プレイヤーの下す一つ一つの意思決定のみ重ねで成り立っているスポーツで、そこが醍醐味でもあるので、ゴルフゲームの微妙な味わいも、面白さも、スリルも、やはりゴルフを実際にやったことのある人間でないと分からないところがあると思う。「クラシックミニ」に入っている「マリオオープンゴルフ」はその進化版で、1991年に発表されたもののようだが、今回やってみて、ゴルフゲームにこれ以上は必要ない、と思えるほど完成度の高い名作だとあらためて思った。

マリオオープンゴルフ
ショット画面
ホールごとに設計(フェアウェイ、ラフ、立ち木、池、川など)、距離、風速、風向き、グリーンの条件(芝目)が明示され、それに応じてクラブを選択し、ショットの強さも、インパクトの位置も、ドローも、フックも、フェイドも、スライスも、バックスピンも、トップスピンも、ショットの高低もみんな打ち分け自在である(サラリーマンゴルファーには、逆立ちしてもできないような技ばかりだ)。こうしたコース条件と、自分が選んだショットの組み合わせによる結果(飛距離、方向、到達位置など)は、確かに納得の本当にリアルで素晴らしいプログラムになっている。挑戦コースはいちばんやさしい「Japan」から始まり、一定のスコア(+以下)をクリアする度に「Australia」、「France」、「Hawaii」、「UK」と徐々に難度が上がってゆく仕組みだが、決まったスコアをオーバーするとコース途中でもプレーが不可になり、それをクリアしない限り次のコースには進めず(コースが出て来ない)、その間はずっとチャレンジ感が続く(*10月末時点で、どうしてもHawaiiはまだクリアできない。これは不可能ではないか?)。ショットの精度は徐々に慣れて上達するが、グリーン上のパットだけは、初期の設計なので若干ラフなところがあり、コツが必要で、そこを掴まないと簡単にはスコアが減らない(バーディとか)。しかし、それもやっているうちに段々と慣れてくる。それに、発表当時はまだ小さくてしょぼい映りのアナログテレビの画面で見ていたコース画像やマリオのプレーが、今は大きくて明るいK対応液晶画面で見られるので、鮮やかだし目も楽である。今や主流の3Dではないが、むしろ2Dで十分で、その方が視覚的にもすっきりしていて疲れない。スコアのセーブ、コース別ベストスコア記録、メモリアルショットとしてホールインワンなどの記念画像も保存できる。

任天堂
スーパーマリオブラザース
ついでに「スーパーマリオブラザース」も久々にやってみたが、こちらもとても30年以上も前のものとは思えないくらいよくできたゲームで、今やっても非常に面白く、これもやはり傑作だ。ゴルフはショット時を除き、考えながら遊ぶ知的攻略ゲームだが、こちらは瞬間の反射神経をずっと必要とする体力ゲームで、はらはらどきどきしながら、冷汗をかきつつたっぷり遊べる(ウデが悪いので、なおさらだ)。これまでスーパーファミコン、マリオ64、Wii、3DSPS4など様々な進化系ゲームも登場してきたし、今やゲーセンにはそうしたゲーム経験を持つ年寄りばかり集まっているらしいが、普通の年寄りは、目が回るような最新の複雑な3Dゲームをやらなくても、また目の疲れる小さなスマホ画面でもなく、家の大きなテレビの前に座って、こうして今でもゆっくり楽しんで遊べるレトロゲームがある。今回それを再発見できて、個人的には非常に嬉しい。体力を使うことはないが、頭の運動にはなるし、普段使わない頭(脳)の部分を使っている気がするので、脳が活性化し、認知症やボケ防止の脳トレには良いのではないかと思う。適度な刺激でアドレナリンもドーパミンも出て、爽快感も達成感も十分に味わえる。妙にリアルな画像の3Dゲームではなく、シンプルで愛嬌のあるこうした2Dゲームでも十分に楽しめることも分かった。家人が言うには、日本人には2D的世界がむしろ向いているそうだ。確かにコミックもアニメの世界もそうだし、ローマ人が言うところの(?)我々「平たい顔をした民族」は、「鳥獣戯画」以来、2Dで描かれたヴィジュアル世界に親しみと、美と、楽しさを見出し、それを愛で、洗練させてきた文化的DNAがあるのかもしれない。いずれにしろ、シブコさんのおかげで、老後のヒマつぶしの方法と楽しみが増えた。感謝したい。