1,300人収容の会場は満員御礼で、コロナのおかげで、長い間、外出もライヴ公演の機会にも飢えていた中高年でいっぱいだった。観客の中心年齢はたぶん60歳くらいで、そこに50代、70代が加わる、という感じだろうか。これは清水ミチコ本人、モノマネ対象を含めた世代を考えたら当然だろう(若い人にとっては、まず対象になる「本人」が誰なのか知らないことも多いので――政治家とか綾戸千絵とか――清水ミチコの芸のすごさも面白さも分からないだろうし、逆に、今回もOfficial髭男などの新ネタを取り入れていたが、会場の「??」という反応が……このあたりがモノマネ・ビジネスの難しいところだ)。男女比は、ざっとみたところ女性が7、8割くらいだったように思う。清水ミチコが、女性に人気のある人だということも分かる。適度に毒とスパイスが効いた唯一無二のあの芸もそうだが、彼女の姿勢や生き方が好きな女性もきっと多いのだろう。
それぞれ誰か? |
会場で見ながら(聞きながら、笑いながら)つくづく思ったのは、ナマの清水ミチコのピアノと歌は本物(?)で、実に素晴らしいということだ。このすごさ、レベルの高さはテレビやネット動画を見ているだけでは、たぶん分からないだろう。大ホールいっぱいに響く彼女のピアノのサウンドと歌声は本当にすごい。下手をすれば(しなくても)、モノマネ対象の本人よりもずっと歌がうまいことだって多々あるだろう。(絶対音感の持ち主なので)とにかく音(原曲のメロディや、真似する歌手の声や音程)をまったくはずさないし、全体のデフォルメが半端ないほど高度なレベルに達しているので、とにかく、モノマネ以前に単独の音楽芸としての完成度が高いのである。実際これはジャズ・ミュージシャンのインプロヴィゼーションに匹敵するレベルの演奏と言えるだろう。
そして1時間半の間、たった一人で千人以上の観客を爆笑させ、乗せまくって、楽しませるエンタテイナーぶりも最高だ。今年は1月の武道館に始まり、今後もまだあちこちでライヴ開催の予定があるようなので、これまで未見の人は、ぜひ一度ライヴ会場に足を運んで、「生(ナマ)清水ミチコ」のすごさと面白さを実際に目にすることをお勧めします。特に先の短い人は、冥途の土産に、一度は見ておく価値のあるライヴです(料金もお安くなっています)。
(*)具体的に何が、どうすごいかは、2021年10月29日の本ブログ記事「天才 !? 清水ミチコの世界」で、長年の清水ファンとして勝手な私的分析を試みているので、興味のある人はそちらをご参照ください。