もうすぐ6年になるハードディスク(HDD)2代目LaCie (3TB) の作動音が、最近さすがにシャーシャーとうるさくなってきたこともあって、壊れる前にストレージの新規導入を検討した。近年TV録画などHDD の映像系需要が激増したおかげで、当然ながら生産・供給量も増え、TBクラスの大容量HDDが昔からは想像もできないほど安価になった。データ量あたりの単価からすると、感覚的には1/5から1/10くらいになったほどで、今は代わりにSSDが昔のHDD価格帯に相当するのだろう。そのSSDも最近になってやっと低価格化してきたので、この際だからと、LaCieに代わる新HDDと、ついでにSSDをバックアップと音質比較を兼ねて導入することにした。
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Glyph Atom SSD1TB
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HDDは音質の観点から、LaCie用に使っていたエーワイ電子製アナログ電源(12V/3A) を継続使用する前提なので、バスパワーでも電源内蔵タイプでもなく、交換可能なACアダプター付きを対象にした。長時間連続再生しながら音を集中して聴く、というオーディオ用HDD使用法だと、耐久性と静音性がもっとも重要だ。調べたら、今のHDD単体の世界市場は、ほとんどWestern Digital (WD) とSeagateの2社の寡占状態らしいので、もう性能的にはどのブランドでも大差ないだろう。そこで最終製品としての信頼性を優先して、現在使用しているI/O製HDDと同じWD/Redを搭載し、かつ日本国内製造のLogitec社のHDD(2TB)を選択した。外付けSSDは、まだ割高だがプロ・オーディオ分野で信頼性の高い米国GlyphのAtom SSD (1TB) という小さなmobile SSDにした。当面I/OとLogitecのHDD2台を常用/比較しながら、GlyphはバックアップとHDD/SSD音質比較用、あるいはいずれ気が向けばハイレゾ専用として使用という計画だ。
この際なので(またも)、MacOSも古いSierraから、まだiTunesが残っている最後のOSX10.14 Mojaveにアップグレードした(これはスムースに移行)。初期から使ってきた再生ソフトAudirvanaは、Win対応にもなったロゴの違う ”新Audirvana" も導入済みだが、以前から使い慣れたUIのMac専用 "Audirvana Plus" をまだ使い続けている(Plusも新Audirvanaも性能面は同等で、名前を統一しただけだ、と同社FAQには書いてある)。AudirvanaにiTunesの楽曲データごと完全移管する案も考えたが、やっとiTunesのデータを整理したばかりなので、iTunesと連動するintegrated modeで使い続けている。いずれその気になってハイレゾを始めたら、ハイレゾファイルのみ、Audirvanaのライブラリーとして別管理することも計画している。
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Pioneer BDR-X12JBK
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あれやこれやと考えているうちに(こういう時間が実はいちばん楽しい)、ふと浮かんだ疑問が、PCオーディオを始めた初期(2008年以降)のリッピング・データと、最新ドライブ装置とソフトで読み込んだデータを比較した場合、再生音に差があるものか、ということだった(どうでもいい人には、どうでもいいような比較である)。初期のころは、「80年代から買い集めたCD」を「MacBook内蔵ドライブ」で「iTunesで直接AIFFでリッピング(エラー訂正あり)」し、外部HDDに格納、それを「iTunesで再生」していたわけだが、よく考えたら現在保有しているデータのたぶん半分以上は、この時代の音源なのだ。当時はとにかく便利だし、並みのCDプレイヤーよりはよほど音が良いということで満足していたが、まずはデジタル音楽黎明期だったCD音源そのものの質、MacBook内蔵ドライブの性能、iTunesのリッピング能力等からみたら、デジタル技術的には格段に進化しているはずだ。その後、確か2013年ころからiTunesではなく、XLD (X Lossless Decoder) というリッピングソフトを使って読み込むようになり、さらに2016年からはI/O データの普通の外付けDVDドライブを使ってきたので、それらの違いにも興味がわく(きりがない……)。そういうわけで、この際だからと(またも)信頼できるリッピング専用機を導入してみようと、さらにオーディオの虫が動いた。いろいろ調べて、Pure Readという精密なリッピング機能を持つPioneerのBlu-rayドライブBDR-X12JBKを購入した。
そんなことで、久々のオーディオ投資で常用外部ストレージが、I/O (3TB)、Logitec (2TB)、Glyph (1TB)と、3台になったわけである。しかし私のMBP (Early2015) は、USB3.0が2箇所しかなく、一つはHDD、もう一つは再生時にはDDC/DAC、リッピング時はDVDドライブにそれぞれつないでいる。最新のThunderbolt3、USB-C端子はなく、その代わり、接続できる機器もほとんどなく、今や無用の長物化しているThundebolt2端子が2箇所遊んでいる(Thunderbolt3とは端子形状が違う)。リッピング装置/ソフトやHDD/SSD間のオーディオ的聴き比べ(遊び)には、間を置かず切り替え試聴ができた方が楽しい。そうなると、少なくともMBPとストレージ2台の同時接続が望ましいが、ノイズ対策のために今はMBPをバッテリー駆動で再生していることもあって、内部分岐し接点の多いUSBハブはできれば使いたくないので(理論的根拠はない)、このThunderbolt2端子の活用策を考えた。
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Thunderbolt Single Port USB3.0 Dongle |
いろいろ調べた結果、Thunderbolt (1&2)/USB3.0変換コネクターというものをたった1種類ネットで見つけた(台湾のLintesという会社の製品で、結構高価だが、他に選択肢がないので。信頼性は分からないが試してみる)。これで、既存USB端子を加えて最低でも2台のHDDないしSSDを同時にUSB結線できるので、聴き比べも楽になる(Thundebolt2端子はもう一つあるが、当面2台でいいだろうということで)。Thundebolt2の速度は、spec上はUSB3.0よりは速いが、最低でもUSB3.0並みになるはずだ。しかしHDD vs SSDもそうだが、データ読み取り、伝送の「速度」とオーディオ的「音質」の関係は、いまいちよく分からない。速ければ速いほど本当に音も良いのだろうか? そうなら、なぜ良いのか、理論的根拠も知りたいが、オーディオは昔からそのあたりが曖昧で、そこがまた面白いところでもある。そのへんは実際に聴いて比べてみたい。
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Bus-Power Pro |
さらにあれこれと考えているうちに、以前DDC/Hi-Face Proにセットで使っていたオーロラサウンドのUSB電源供給機Bus-Power Proがあったことを思いだした(今はPro2という新バージョンになっている)。Hi-Face自体は旧ドライバーが新MacOSに非対応で使用できなかったので、相棒の存在を忘れていたのだが、これを現在バスパワー/DDCとして使用中のiFi nano iONEにかませたらどうなるかと思って試しに繋いでみたら(USB2.0接続になるが)、MBPのMIDI設定でも問題なくDDCを認識した。出てきた音を聴いてみたが、iFiはかなりノイズ対策をしている機器のはずだが、それでもMacバスパワーに換えてトランス式ACアダプター電源による補助電力を供給してみると、明らかに音の厚みとクリアさが増すので、やはりPCとバスパワー接続したUSB機器のノイズ対策には効果があるようだ。オーディオは、アナログだろうとデジタルだろうと、やはりノイズ制御が肝要なのだとあらためて納得。以前からアナログアンプ類とDACはアイソレーション・トランス経由で給電しているし、上記HDDのLaCieもエルサウンドのアナログ電源経由で使用してきた。ACバックグラウンド・ノイズが減ると、とにかくステレオ音場が静かになって広がり、再生音の滲みが減って音像の実体感が増すことを経験しているので、PCとUSB機器間も同じことなのだろう。Mac/Bus-Power Pro間をデータ専用USBケーブルで結線して電力供給を完全に断てば、さらに効果的と思われる。いずれUSBバスパワーのGlyph SSDでも分離給電を試してみたいと思う。
究極の電源対策は、マイ電柱や200V電源でACノイズをシャットアウトすることだろうが、残念ながら集合住宅ではそうもいかない。あのホンダが開発し、ついに市場投入した商用電源ノイズ対策機器であるオーディオ用バッテリー「LiB-AID E500 for Music」 にも興味が湧くが、電力消費の少ないオーディオ上流部分への適用なら、大きなノイズ削減効果が見込めそうだ。しかしACノイズフリーを目的に、再生時にはバッテリー駆動しているMBPのようなノートPC本体も、HDDやSSD自体も、それ自体がノイズ発生源なので、デジタル機器のノイズ問題はキリがない。ただし、何らかの対策や工夫をすればするほど「音場」が静かになり、透明度が増し、音がくっきりと聞こえてくる(ように感じる)ことも事実だ。
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Mac改編接続フロー |
というわけで、左記チャートに示すような改編接続フローがとりあえず完成した。 i
Tunesライブラリーの整理整頓は予想以上に大変で、素人には頭が痛くなるような作業だったが、こちらもどうにかこうにか完了した。ファイル階層の見た目もスッキリし、(!)マーク の出る楽曲や重複データなども可能なかぎりつぶした(まだ時々出るが)。そのiTunesの「修正版
ライブラリー/音源データ」を、3つのストレージそれぞれに置くことにした。3種類のストレージは、Glyph SSD(バスパワー)、I/O HDD(電源内蔵)、Logitec HDD(外部アナログ電源)と電源供給のタイプもそれぞれ異なる。これでデータの相互バックアップができ、3つもあれば万が一どれか1台がクラッシュしたときも安心だ。
聴くときにiTunesのoptionコマンドでストレージ/ライブラリーを選択すれば、同じ曲のストレージ別即時聴き比べも可能になる(はずだ)。過去の音源と新たにリッピングした音源の差、新たにリッピングする同一曲のストレージ別の音の差はもちろん、HDD/SSDの違い、Thunderbolt2 / USB3.0経由の音とUSBダイレクトの音の違いなど、聴き比べで遊べる組合わせはたくさんありそうだ……そんなに聴き比べてどうする?(笑)という疑問を持つ向きもあろうが、これぞオーディオの楽しみの本質なのである。(続く)