Breakin' It Up 1959 Argo |
まったく気がつかなかったが、1ヶ月以上前の昨年12月8日に、ジャズ・ピアニスト、バリー・ハリス Barry Harris (1929-) がコロナの合併症のために91歳で亡くなっていたことを今日になって知った。
こういうニュースには必ず目を通しているのだが、なぜか見逃していたようだ。リー・コニッツをはじめ、コロナで多くのジャズメンが次々に亡くなって行くので心配していたが、以前、ハリスのライヴ公演を店で企画するなど彼と面識のある山口県・萩市のジャズ喫茶《Village》の増本さんの情報だと、バリー・ハリスは元気でいるということだったので、そのまま安心していたのだ。ビバップ時代の真正ジャズ・ミュージシャンの生き残りは、これでついにソニー・ロリンズだけになったか。
2017年4月のブログ記事「鈍色(にびいろ)のピアノ」に書いたように、バリー・ハリスはバド・パウエル直系のバップ・ピアニストだ。トミー・フラナガンの洗練とも、デューク・ジョーダンの哀愁とも違う、独特の裏町風の味わいがあるその演奏からは、何とも言えない “20世紀のジャズの香り” が漂っていて、いつまでも聞いていたくなるハリスの渋いピアノが私は大好きだった。ハリスと直接会ったことはないが、そのピアノを聴けば、どういう人物だったのか、私には分かる。
セロニアス・モンクの本を翻訳するまでまったく知らなかったことなのだが、ハリスはモンクと同時期にウィーホーケンのニカ夫人邸に住み、モンクの死の直前には二人で最後の共演〈マイ・アイデアル〉を演奏し、1982年2月5日に自室で倒れたモンクを発見して病院へ通報し、モンクの死後もニカ邸に住み続けるなど、モンクとの関係も深い人だった。ニューヨークでワークショップを長年続け、多くの生徒を持つジャズ・ピアノの教育者でもあった。
40年来の愛聴盤『Breakin' It Up』(1959 Argo)を聴きつつ、バリー・ハリス氏のご冥福を心よりお祈りしたい。